アイドルだからこそ書くことができた小説たち

『ピンクとグレー』(2012)に引き続き『閃光スクランブル』(2013)、『Burn.‐バーン‐』(2014)も読み終わった。それぞれにそれぞれの作品としての魅力があり、また作家としての加藤シゲアキの魅力にも満ち溢れた物であった。だがしかし、『閃光スクランブル』だけは読んでいて辛い部分があった。

 

この作品は、カメラマンである巧と人気アイドルグループのメンバーである亜希子の視点で語られていく。アイドルである加藤シゲアキが綴る「アイドル」は、ただキラキラ輝いているのではなく、とにかく必死だった。笑顔の裏には私たちからは想像しがたい苦労があり、文章からその感情がひしひしと伝わってきた。そんな亜希子の姿がどうしても「NEWSの加藤シゲアキ」と重なってしまい、ページをめくる手が止まってしまうことが何度かあった。

最後のページまで読み終わると、映画『オペラ座の怪人』のラストシーンを思い出した。モノクロの景色の中に浮かび上がる真っ赤なバラの花がなんとも感動的な、あのシーンだ。巧の目から見た、スクランブル交差点でダリアを持つ亜希子の姿はまさしくそのようなものであったのではと想像してしまった。『ピンクとグレー』とはまた違う、鮮やかな色彩が広がる物語であった。

 

 

最後の一冊は『Burn.‐バーン‐』だ。物語は、20年前の記憶を失っている舞台作家である夏川レイジの現在と、天才子役であった幼少時代の話によって進められていく。読み進めていくにつれて、20年前の事件が露わになっていく仕掛けである。あまり深く話をしてしまうとネタばれになってしまうので割愛するが、「THE END」の文字を見たときに、きっと最初のページに戻るだろう。『Burn.‐バーン‐』という物語自体が、ひとつの物語なのだ。まだ読んでいない方にもぜひ読んでみて欲しい。

 

 

作家・加藤シゲアキが出版したものは全て読破した。どの作品も芸能界が関係しており、芸能人である彼だからこそ書くことができる小説だ。フィクションと分かっていながらも作者と重ねてしまう。そのことが、小説の持つ魅力をより惹きたてているのかもしれない。また、三作品とも物語が進むにしたがって速度を上げてキャラクターや風景が色づいていき、最後には鮮やかな景色を見せてくれる。今後、加藤シゲアキがどのようなジャンルの小説に挑戦してくれるかがとても楽しみだ。前回の記事でも書いたが、シゲはアルバム『NEWS』の初回特典DVDの企画であるLIFE OF NEWSの中で、いつか脚本を書いてメンバーに出演してもらいたいと語っていた。そして、今月25日発売のNEWSのニューアルバム『White』の初回限定盤についてくる特典DVDの脚本はシゲが担当している。まずはこの作品を楽しみにしていこうと思う。(もちろん衣装も含めてね☆)

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